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武田信虎が生まれる。武田信玄の父。

　武田信玄といえば、「戦国大名」の最右翼たる人物と言っても過言ではありません。その信玄の父が信虎です。信虎はこの日、信縄の嫡子として甲斐岩下館に生まれました。永正四年(1507)二月に信縄が没すと、信虎(当初五郎信直と名乗る)は家督を嗣ぎ甲斐武田氏十八代当主となりました。信玄の時代には甲斐国は安泰でしたが、信虎の時代には二度危機が訪れます。初めは永正十二年(1515)の大井信達謀反、二度目は大永元年(1521)の福島(くしま)正成侵攻です。

　大井信達謀反の際には信達と結んだ駿河の今川氏親が重臣福島正成を加勢として送り込み、兵力に劣る信虎は苦戦します。しかし反撃に転じ福島勢を勝山城に押し込めて兵糧攻めにすると、氏親との間に和議が成立しました。その際、活躍したのは氏親から差し向けられた連歌師・宗長というから驚きです。当時連歌師は京都の文化に詳しく、さらに諸国の大名らに指南して回るため自然と諸方の情報にも通じており、貴重な情報源としても大切に扱われていたのです。ともあれ信虎は信達とも和を結び、長女を室に迎えました。これが大井夫人で、信玄・信繁・信廉の母となります。

　二度目の福島正成侵攻の際は国人衆が離反したこともあって、信虎の兵力はわずか二千という有様でした。当然劣勢となりますが、飯田河原の戦いでは計略を成功させて勝ち、続いて行われた上条河原の戦いでは福島正成を討って危機を乗り越えています。

　しかし信虎は天文十年(1541)六月、駿河滞在中に信玄によって甲斐から締め出され、信玄が当主となりました。信虎四十八歳。以後二度と甲斐の土を踏むことなく、天正二年(1574)三月五日、信濃高遠に八十一歳の生涯を終えることになります。その時信玄は既に世を去っていました。